2019年4月25日
ハシラスは、過去にVRドライビングシミュレーター「ハシラスVRドライブシステム」を開発、九州工業大学の井上創造研究室に納入するなど、「VRを用いた自動車運転体験」について研究開発を行なっています。
「ハシラスVRドライブシステム」は、様々な運転状況をシミュレート可能なソフトウェアと、これまでの体感ドライブ筐体にはない加減速や制動時の衝撃、旋回加速度などを組み合わせることで、非常にリアルな体感を実現したVRドライビングシミュレーターです。非常に大規模なハードウェアを用いていましたが、現在ハシラスでは、より機構を簡素化し、様々な用途に応用可能な新型のドライビングシミュレーターシステムを開発中です。
特に、喫緊の社会課題とされている高齢ドライバー問題を念頭に置いています。
新型VRドライビングシミュレーターの概要
ハシラスが開発中の新型VRドライビングシミュレーターは、加減速・制動衝撃・旋回体感や、フォースフィードバック対応のステアリングやペダルといった特徴はそのままに、構造を簡易化し量産も見据えます。
VRならではの没入感と体感提示により、実車に近い運転体験を実現しつつ、いわゆる「VR酔い」を起こしにくいものとなります。
また、視線追跡対応のVRヘッドセットを用いることで、ドライバーが何を注視しているか、視線がどのように動くかなどを計測可能です。
新型VRドライビングシミュレーターの活用例
開発中のVRドライビングシミュレーターは、現状では下記のような活用が考えられます。
高齢ドライバーの運転についての調査・研究
現在、高齢ドライバーによる交通事故が社会的に問題視されています。高齢者の事故率そのものは若年者とそう変わりないという分析もありますが、ますます進みゆく日本の高齢者人口増加に伴い、高齢ドライバーによる事故件数自体は増加していくはずです。また、それに付随して高齢ドライバー特有の様々な事故要因が顕在化してくると考えられます。
老化に伴う身体的・脳機能的・心理的変化によってドライバーの運転技術はどのように衰えていくのか。また、そうした変化がどのような事故につながりうるのか。VRと体感ハードウェアを用いたドライビングシミュレーターを用いることにより、そうした研究・調査に寄与しうると考えています。
高齢ドライバーのトレーニング
現行制度においては、認知症が認められる高齢ドライバーに対する免許の停止・取り消しといった行政処分が存在します。また、免許の自主返納制度についても周知が進みつつあります。
一方で、自動車の運転が高齢者の心身の機能を維持し、認知症予防などにも一定の効果を果たすという分析もあります。また、免許を失い運転できなくなった場合の心理的ケアや、QOLを維持するための取り組みや体制づくりが不十分な点についても考える必要があります。
単純に「高齢ドライバーには運転させない」というのが根本的な問題解決になり得ないという示唆がある中で、注目すべきなのが高齢ドライバーへの運転トレーニングです。
運転能力は加齢とともに衰えていきますが、継続的なトレーニングにより、運転技術を長く維持しうるということがわかってきています。
ドライビングシミュレーターを用いて運転技術や危険予測を継続的にトレーニングすることで、多くの人が老後もより長く、安全に自動車の運転を続られる可能性があります。
高齢ドライバーの運転能力診断
とはいえ、老化に伴う運転能力の低下により、どうやっても運転を断念せざるを得ない時はやって来ます。場合によっては免許の自主返納なども選択肢に入れる必要が出てくるでしょう。
しかし、自分自身の運転能力低下を自覚できず、能力が十分でない状態で運転を続けてしまうケースがあります。能力低下の事実をどうしても受け入れられず、家族からの返納の説得にも応じない、という話もよく耳にするところです。
ハシラスでは、VRドライブシミュレーターを通じて高齢ドライバーの運転能力を診断し、客観的な数値として見える化できないか、と考えています。自分自身の運転適正を客観的に知り、現実とのギャップを正確に把握することで、高齢ドライバーの運転時の安全意識を向上させ、あるいは免許返納に向けた自主的な意識を芽生えさせることができるかもしれません。
運転能力の低下には非常に多くの要因が絡み合っています。視覚・筋力・関節の柔軟性といった身体的要因、脳機能や認知能力、さらには気配り、思いやりといったコミュニケーション能力など、運転に必要とされる多種多様な要素を網羅することは困難ではありますが、VRならではのリアルな運転体験におけるドライバーの行動を、ハンドルやペダルなどインターフェースの入力結果や視線移動などから分析することで、多角的な診断が可能になり得ると考えられます。
ハシラスは、これからのクルマ社会をより良いものにするために、研究・開発を進めてまいります。上記VRドライビングシミュレーターなどにご興味をお持ちでしたら、ぜひ以下のフォームよりお問い合わせくだされば幸いです。